モモの缶詰

様々な果物の産地「山梨」には、とても面白い方言が存在する。他国からの侵略に備え、国全体を要塞のように構え、入国を制限したからだと、そのような面白い方言が生まれたの思うのです。例えば「ふんじゃあわにわに」、みんなでワイワイ騒ごうじゃないかという意味だという。「モモ」が付く言葉に、「ももっちい」という言葉がある。大意としては、「こそばゆい」といったところか。「山梨」はモモの缶詰ならぬ、言葉の宝庫「言葉の缶詰」なのである。


私が子供の頃の昭和20年代は物が乏しく、菓子類はおろか蜜柑や林檎以外のフルーツなど、滅多に口に入る物ではなかった。病人のお見舞いに栄養を付けてもらおうと、鶏肉や卵を持って行った時代であった。どこでも見かけるバナナだって、本格的な病気にでもならないと食べられるものではなかった。そういえば、「干しバナナ」という妙な物があったな。子供の頃のフルーツの王様は、モモの缶詰なのであった。


今でこそ熟した食べごろの「モモ」が売られているが、子供の頃に食べた「モモ」は硬く、甘みも乏しかった。甘かったのは蜜柑と、木から自分でもぎ取った熟した柿ぐらいだったろう。お盆に本家の神棚のお供えには、涎が止まらなくなるほどの宝物が捧げられていた。「みつ豆」「蜜柑の缶詰」「パイナップルの缶詰」、そして王様のモモの缶詰、シロップで甘く煮たフルーツは、生のフルーツよりも数段素敵な食べ物であった。

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